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中川多理 Tari Nakagawa 【球体関節人形&人形写真】

「物語の中の少女Ⅱ」-海の百合によせて


「物語の中の少女Ⅱ」展、撮影時のことを思い出しながら画像を整理しています。
今まで使っていた現像ソフトが使えなくなってしまったので、新しい海外製のソフトを導入。
四苦八苦していましたが、ようやく感覚的に使える様になりました。

初夏の頃に開催された「物語の中の少女」展、
その発展形として第二回目が今秋に開催されました。

いつもテーマの選択は自由なのだけど、「たまには何かくださいな」とお願いしたところ
「『海の百合』ではどうですか」とお題を頂きました。

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マンディアルグは少女凌辱の極みでどの作品もたいへん好みであり、前回も『黒い美術館』の中から「仔羊の血」を選んだりしていたのですが、「海の百合」はその点少し異色の物語で、初読の印象で主人公のヴァニーナにあまり愛着が持てずにいたので、出来たらやりますねぐらいの感じで留め置いていたのでした。



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「海の百合」-サルジニア島にヴァカンス中の少女ヴァニーナが、一人の名も知らない青年を見定めひと夏の破瓜の儀式を果たす物語。終始儀式の遂行がヴァニーナによってコントロールされていく。

マンディアルグ作の中でこのヴァニーナは何処か異質で、能動的に行動的に彼女は予定した儀式に彼を導き遂行し完了する。





同行している友人ジュリエットの扱いや、青年に見せる背伸びした姿態、でも子供っぽさも残る態度に、少女の持つ厭な部分を見せられる様な、どこか女子に対する同族嫌悪的な印象を持っていました。


でも、作品として仕上げる事を想定して読み返した折に、やはりマンディアルグの筆致は美しく惹きこまれていきます。

終盤でヴァニーナの両親が虐殺されたエピソードを彼女自身が告白するシーンがあり、彼女の痛みが、血に塗れた母親と彼女との感応によって語られていくのですが

主導権を握り、全てをコントロールするかにみえた彼女が、賊に結えられ犯され殺された母親の姿と自分をなぞらえるかのような姿であり、此れこそが必要な精神的外傷への治療であった事、唐突に思えた彼女の行動が必然の行為であると改めて了解した時に、初めて彼女を愛らしいなと思えたのでした。



砂地に塗れて月光に晒され色を失った黒い絹の儀礼用の長いスカートと袖無しのブラウス…
いくつか印象的な場面はありますが、この黒い絹のドレスを纏い青年と相対したヴァニーナを作ろうと思いました。



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(海百合のイメージ、処女性のイメージから何となく白を想起していて、黒というのが唐突に思えていたのですが、過去への冥魂、弔いの黒という意味合いもあったのかな、と想像しながら制作しました。絹で黒で…たいへんに縫いづらかったけど、縫い物スキルが上がった気がします。)



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(後ろ手に結えられる赤いネクタイも大事なモチーフとして、彼女に纏わせました。)



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砂地を再現し、月明かりが差し込んだように顔にかかる光が素晴らしい舞台効果でした。

他に日焼けした水着跡とか下腹部の淡く柔らかい繁みとか…色々意匠を凝らしてありました。
展示では見えませんでしたが、誰も知らない見えない所にこっそり心血を注ぐのは好きです。




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「海の百合」は制作を通してやっとヴァニーナに寄り添い近づけた気がします。

読書は好きだけれども、人形制作を始めてからその時間は格段に減り、まだ手にしていない読みたい本も膨大で、普段同じお話を読み返してその印象が初読と変わる様な事はあまりないので、制作を通してゆえの事だなあ、と面白く新しい読書体験でした。





「仔羊の血」がフィ二に捧げられたように、これは後の恋人ボナに捧げた物語。能動的で行動的な女性への讃美が感じられる美しい物語です。是非一読を。


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